ストリートファイターII
ダッシュ

カプコン 1992年4月14日発売 

横画面 対戦格闘

8方向レバー パンチボタン×3(弱・中・強)

       キックボタン×3(弱・中・強)



ファンの願望
1991年も暮れに迫った頃、ゲームセンターでは2台の筐体を使ったストIIの対戦台が出回り始め、それまでCPU戦しか知らなかったプレイヤーたちもたちまちプレイヤーVSプレイヤーの面白さに魅了されていき、落ち着きを見せたかに見えたストII人気がまたしても爆発していった。

しかしご存知のように初代ストIIはガイル、ダルシムが圧倒的な強さを誇っており、いわゆる「キャラ勝ち」の要素が強くなりすぎていたため、下位キャラ使いにとっては正直白けていた部分があった。

「昇龍拳でダウンしてくれたら…」、「もうちょっと通常技の判定が強ければ…」


そんなリュウ・ケン使いの心の叫びがゲーセンから聞こえてきそうな状況が続いていた頃、ゲーメスト92年2月号で衝撃的な発表がされたのが、このストIIのバージョンアップ版である「ストリートファイターIIダッシュ」だ。


ゲームの特徴
このストIIダッシュの売りは、やはり何と言っても「四天王が使える」だろう。

CPU専用キャラということもあり、元々の基本性能が高すぎるため、前作よりか多少は能力は落ちているものの、それでもそれまで敵だったキャラを自在に動かせるというのはやはりこのゲームの持つ最大の魅力だ。

ただ基本性能が高くても、通常技の数は圧倒的に少ないため、従来の8人と比較してやや奥深さに欠ける部分と言う欠点もあった。




従来の8人のバランスも再調整され、リュウ・ケンなどは必殺技、通常技のいずれも大きく強化されたが、逆にガイルや春麗、ダルシムなどはかなり弱体化された。

これらの変更点はゲーメストで詳しく紹介されたが、見た目ではわからない部分が多かったため、ゲーメストを読んでいないプレイヤーはストIIとどこが違うのかわからない人が多かっただろう。

これにより一気にリュウ・ケン使いが増加し、ガイルや春麗使いは減っていったが、個人的な意見としてキャラクターの強い、弱いでキャラを選ぶのはあまり好きではない。



その後発売された格闘ゲームを見ても、これだけ魅力溢れたキャラクターが揃っているゲームはほとんど見あたらず、そういう意味では奇跡とも言えるようなゲームなのだから、やはり自身の好みを優先して使って欲しいものだ。

それはさておき、発売直後はリュウ・ケンばかりの強化が目立っていたこともあり、対戦ダイヤグラムでも上位をキープしていたが、研究されるうちに段々と地位は下がっていき、最強はサガットとベガの争いになり最終的にはベガが最強の座についた。ただベガは後述のように非常に極悪なはめ技の存在により、ベガ使いは「お子様プレイヤー」と嘲笑の対象となったため、対戦マニアからは好まれるキャラではなかった。


8人の実力差は前作よりも縮まったものの、結局最強はガイル、最弱はザンギエフと前作と同様の結果になってしまったため、調整不足は否めなかった。

またステージの看板などのオブジェクトがカットされ、その分の容量がサガットの投げなどの新技に使われたが、個人的にはボーナスステージも全てカットして、もっと新技を増やしてもよかったのではないかと思う。

キャラのアップ顔も変更されたキャラが多かったが、リュウはまるで別人のような老け顔のオッサンになってしまいリュウ使いの私としては嫌だった。




当時の状況
ゲーメスト92年3月号で四天王を含むキャラセレクト画面が発表され、四天王をプレイヤーキャラとして使えることが判明し、4月号では具体的な変更点が紹介され、プレイヤーの期待は最高潮に膨れ上がっていった。

そして2月下旬のAOUショーにおいて、開発中のバージョンながら遂にストIIダッシュはその姿を現し、当然のようにカプコンのブースは黒山の人だかりで沸き返った。

この時のバージョンではザンギエフやバイソン、バルログが強く、特にバルログはこの時点のストIIでは最強キャラと言われたそうだが、すぐに再調整が行われて今の強さに落ち着いた。


そして4月に発売してからはほとんどの基板が対戦台に組み込まれ、ゲーメストの人気ランキングでは991点という史上最高得点が記録されるほどの人気を博した。

もちろんゲーメスト本誌も半年以上に渡って大特集が組まれていき、特に盛り上がっていた4〜8月号の辺りは売れに売れ、バックナンバーもすぐに在庫がなくなる、という状況だった。

8月にはストII以来の増刊号も発売され、今作では対戦攻略に重点が置きつつもCPU戦や連続技の解説も豊富で、前作に負けず劣らず素晴らしい出来の増刊だった。



夏には昨年に続き再びゲーメスト主催によるストIIダッシュの大会が行われ、前回とは異なり全国のゲーセンで予選が行われ、そこで勝ち抜いた者により10月に決勝トーナメントが行われるという、ゲーメスト主催では最大規模のゲーム大会なども行われた。

しかしその頃ある業者による海賊版が横行し、ストIIダッシュの人気は思わぬ所でミソを付けられ、カプコンは急遽対策として「ストリートファイターIIダッシュターボ」を発売し、全国のゲーセンのストIIダッシュはすぐさまターボにバージョンアップされていき、一気にダッシュはゲームセンターから消えることとなった。



ターボもダッシュの後を継ぎヒットを飛ばしていったが、発売から8ヶ月で新バージョンが発売されたためすぐさまダッシュは過去の作品となってしまい、一体あのダッシュの盛り上がりは何だったのだろう、という疑問や空しさばかりが印象に残り、大ヒット作としては何か存在感の薄い作品となってしまった感があった。










はめ技
解説してきたように、ストIIダッシュは発売直後から対戦台は爆発的な盛り上がりを見せていったのだが、対戦が広まりキャラクターの能力が明らかになってきた頃になって問題となったのが「はめ技」だった。

はめ技は前作にも存在したが、リュウ・ケン、ザンギエフなど基本性能の低いキャラクターにおいてははめ技を使わなくてはどうにもならないほどだったため、それらのキャラによるはめ技は暗黙の了解とされ特に問題視されなかったが、このストIIダッシュにおいてはベガというのが問題だった。




ただでさえ基本性能が高いのに加え、サイコ投げとダブルニーはめはどちらも難しいテクニックはいらず、さらにダブルニーはめにいたっては無敵技を持たないキャラはほとんど脱出不可能ということもあり、勝つためには手段を選ばぬ輩には格好のキャラとなってしまったのである。

当然すぐさまはめ技は大きな論議を巻き起こし、ベガ使用禁止台まで置くゲーセンが現れ、ゲーメストでも座談会が組まれたりするなど、一連のはめ技は波紋を呼び続けた。

結局それらの行為を行うプレイヤーは「お子様」と揶揄され蔑視の対象となり、ターボが発売されはめ技がなくなると沈静化され、ターボと同時期に発売された餓狼伝説2などでもはめ技が出来ないよう過剰なまでの対策がなされていたが、それほどダッシュの引き起こしたはめ技問題は大きなものがあった。


ストIIダッシュチャンピオンシップ
このストIIダッシュでも、前年のストII大会に引き続き、ゲーメスト主催による全国大会が行われた。

ただ前回は参加方法が実力ではなく抽選で、会場も東京の1大会のみだったので全国大会とは言い難いものだったが、ダッシュではまず夏休みに全国各地のゲームセンターで予選が行われ、そこで勝ち上がってきた2名が10月の決勝戦の三省堂ホールに進出出来るという、まさに全国大会の名に相応しいものだった。

この模様はゲーメスト93年1月号で大きく紹介され、先に12人のキャラを使い切った方が負けという決勝の特別ルールにおいて日本一のプレイヤーが決定された。


私の近所では鶴間のオレンジハウスで予選が開催されたものの、3段昇龍拳などは完璧だったとは言え対戦そのものの実力は大したことがなかったので参加はしませんでしたが、それでも雑誌を読んでいるだけでも各地の熱気が伝わってくるほど大会は盛り上がっていたものだ。

ただ前回とは異なり、決勝リーグにおいて画面写真による試合の詳細が少なかったため、その点は前回と比べて物足りないものがあったのが残念だった。


キャラクター紹介

リュウ

前作では作り込みすぎた故に、対戦では下位に位置するキャラとなってしまったが、それだけにダッシュでは大幅に変更され最も強化されたキャラとなった。代表的な点としてはやはり必殺技であり、波動拳の硬直時間が短く、小昇龍拳を地上で当てても相手はダウン、竜巻旋風脚の上昇・下降が無敵、さらに地上で当ててもダウンと、3つ全て大幅な強化がなされた。

もちろん全て連続技に組み込めるので、リュウ相手にピヨッたらほぼKOは確定とも言え、対戦では上位ではなかったものの使いやすさと爽快感からリュウ使いが激増した。





ケン

前作ではリュウとほぼ同性能であったが、今作では同キャラ対戦が可能となったために大きな差が付けられた。強化ポイントはやはり昇龍拳であり、小を地上で当てるとダウンするのはもちろん、出るまでが早くなったため全キャラ相手に正面からの大・大・アッパー昇龍拳が入るようになった。この事により全キャラ中最高の爽快感を味わえるようになったため、ケン使いが激増したものだ。

他の強化点は大の昇龍拳が横に大きく伸び、地上で当てると2発入るようになった。これによりザンギ、バイソン相手には4段昇龍拳が正面から入ってしまう。波動拳は変わらず、竜巻も動きが早くなった程度なので、リュウには及ばず対戦では下位に位置していた。


通常技では何といってもジャンプ大パンチが異常に強く、簡単に飛び込めるようになった。


本田

百烈張り手に当たり判定ができ、小パンチなどで簡単に返されるようになってしまった。その代わり動けるようになり、出しやすくもなったので対戦などでは使いやすい。

スーパー頭突きは出るまでが早くなり格段に使いやすくなった。しかしその反面、小頭突きは対空兵器にはならず、小パンチ連打が可能なキャラだと簡単に撃墜されてしまうため、こちらは欠点が目立ってしまった。飛び道具を持つ相手にも相変わらず不利なので、前作同様対戦では下位に位置するキャラであった。






ダルシム

前作では技の判定が強すぎたため、ほとんどの面で弱体化がなされた。またグラフィックも大分変更されている。それ以外に大きな変更点は見られないものの、何と言っても空中でやられ判定が存在する大きなバグがあるため、キャラによっては一度はめられるとそのまま終わってしまう。よって当然対戦では禁止技であった。










ガイル

やはりと言うか最も弱体化の目立つキャラだ。一番の変更点は何と言ってもサマーソルトであり、威力が減り隙も大きくなったので、落下時に簡単に反撃出来るようになった。大サマーは密着していると2発入るが、特にダメージも大きくないためほとんど意味はなかった。

通常技も大きく弱体化し、接近大キックなどの対空兵器がほとんど使えなくなった。小パンチ、中キックのリーチも当然短くなっている。しかしこれだけ弱体化されても強い事に変わりはなく、旧8キャラではトップの強さでありまだまだお子様プレイヤー愛用のキャラであった。





ザンギエフ

ダブルラリアットが出た直後に大きな当たり判定が付き、対空兵器として使えるようになった。左右に動く事も出来るので、波動拳にも余裕で反撃出来る。反面スクリューは弱体化され、見た目は派手になったものの着地時に画面端まで離れるようになってしまい、はめは不可能になってしまった。対戦ではガイル、ダルシムに対しては前作よりもマシになったが、あくまで前作より、と言う程度であるため対戦ではやはり最下位であった。特に今作ではサガットが新たな天敵となり、極められるとまず勝てない。

通常技は頭突きが特殊であり、見た目は同じだが当てるとほぼピヨるようになった。




春麗

前作でボツになった背中蹴りが復活し、逃げ蹴り等も出来るようになった。百烈キックも出しやすくなり、さらに掌底にキャンセルがかかるため大きな3段攻撃が可能となった。しかし全体的には弱体化が目立ち、対戦では一気にランクが下がり押される面が多くなってしまった。











バイソン

パンチしか出来ないので不利と見られていたが、やはり予想は当たり対戦では下位に位置するキャラであった。技のバリエーションももちろんだが、ジャンプが遅く判定も弱いので、飛び道具を持つ相手には圧倒的に不利でありトリカゴにされたら終わりと言えた。

しかし大パンチのリーチが非常に長く、連続技も豊富であり威力、爽快感も抜群なため使いこなせればかなり面白いキャラであり、上級者には好まれた。ターンパンチは押した時間で威力が決まるようになり、上手く使えば一発逆転も可能だ。

CPUバイソンは非常に弱く、ダッシュアッパーがしゃがんでかわせるようになったため、足払いだけで勝ててしまう。


バルログ

スペイン以外では、バルセロナアタックは三角飛びで行えるようになった。ローリングクリスタルフラッシュは転がりにも当たり判定が加わり、最後の爪の威力も強いため前作よりかは強化されている。通常技の判定はかなり強く、特にジャンプが早いため飛び道具に対してはとても有利だ。

また線が細いためか、連続技が入り辛いのも大きな特徴と言える。








サガット

発売前から相当強いと予想されたが、案の定やはり強く、一時は最強説まで飛び出したほどだ。タイガーアッパーカットは前作同様、出た瞬間のみ無敵時間が存在する。よって対空兵器としては使い辛いが、伸び上がっても威力は変わらないためカウンターで当てても有利だ。もちろんタイガーの強さも健在だ。

また新技としてタイガークラッシュと言う名の膝蹴りが加わり、動きの遅さをカバーでき連続技にも組み込めるため一層強さを引き立てている。通常技では足払いが使えるようになったのも大きい。





ベガ

発売当時はさほど目立った強さはなかったが、次第にランキングを上げ最終的には手が付けられなくなりダッシュ最強キャラの地位を物にした。

要因はやはり何と言ってもサイコクラッシャー、ダブルニープレスの2大必殺技があまりにも強すぎ、はめも簡単に決まってしまうなどお子様プレイヤーの格好のキャラとなってしまった。








変更点
四天王が使えたり、各キャラクターのバランスが再調整されているのだけでなく、その他にも細かい変更点がなされており、ここではそれらの変更点を紹介しよう。

同キャラで対戦可能 ストIIでは同じキャラが二人いるのは不自然、という理由で導入されなかった同キャラ対戦だが、ダッシュでは改めて導入され、これによりキャラの有利・不利が完全になくなった。
ラウンド4が
ファイナルラウンド
前作のCPU戦の問題点のひとつに、ダブルKO稼ぎというのがあったが、今作では対策としてラウンド4がファイナル・ラウンドに変更された。さらにファイナルラウンドではボーナス点はおろか、技の点数さえ入らないため、ダブルKOは全く意味のなさないものとなった。
CPUが強い 普通にアルゴリズムが強化されているのはもちろん、こちらがピヨると連続技をかけてくるようになり、当然投げはめも通用しない。このため前作よりもクリアは厳しくなっているが、投げはめ対策の盲点を突いた足払いによるはめがあっさり発見されてしまったため、結局簡単なパターンで勝ち抜けることに変わりはなかった。
小技の連打
によるダメージが
減り、
気絶しにくい
これによりより連続技の有効性が重視され、ダイヤグラムのランクは低くても一気にダメージを与えられるリュウ・ケン使いが増えていった。
起き上がり必殺技が出やすい ストIIでは起き上がりに無敵の必殺技を出しても、絶対に「無敵〜無敵」にはならず、飛び蹴りなどを重ねられるとガードするしかなかったが、ダッシュではどんな状態であっても起き上がり必殺技が出せるようになった。

これにより無敵の必殺技を持つキャラは一気に有利となったが、やはりタイミングが難しく、技を重ねられた状態での起き上がり必殺技は一種の賭けに近いものがあった。当然攻める方も賭けなため、ストIIダッシュにおいて起き上がりでの攻防は大きな見せ場のひとつとなった。
必殺技で決めると、3倍の得点が入る 後に必殺技でバイタリティを0にしても3倍の得点が入ることも発見され、ザンギエフのスコアが一気に上がっていった。
メッセージに
カタカナ、
漢字が加わった
これだけでもかなりゲームの雰囲気がしまって感じられたものだ。
エンディング曲が
新たに加わった
容量は前作と変わらないのに、何で新たなBGMが加わったのかは当時不思議に思ったものだ。


個人的な思い出
私はストIIは初プレイからずっとリュウ・ケン使いで、その後も使うキャラと言えばザンギエフとかでしたから、対戦が流行り始めると非常にフラストレーションの溜まるプレイが続いていきました。

そんな訳でゲーメスト92年4月号のダッシュの変更点が紹介された時、かつてないほどの期待感が膨れ上がっていきましたね。

そして4月中旬、近くのニチイのゲームコーナーに向かった私は、ちょうどオペレーターの方が筐体にダッシュの基板を組み込んでおり、セットが終わるのを待ったらすかさずリュウとサガットで1回ずつプレイしました。


最初の3人は無難にクリア出来たものの、4人目にリュウが出現するとあっさりやられてしまい、当時はまだ行き着けのゲーセンがなかったことから、それから2ヶ月ほどはあまりプレイすることはありませんでした。

6月ぐらいになると小田急相模原の某ゲーセンに行き始め、対戦をしまくるようになりましたが、すでにリュウとケンの3段昇龍拳がほぼ完璧でしたので、しばらく気分良く対戦することが出来ました。

その当時が私がダッシュの対戦に最も熱くなっていた頃でしたが、7月ぐらいになると他のプレイヤーも上達してきたこともあって嫌になってしまい、それからはあまりプレイしなくなってしまいました。

夏休みに入ってすぐの頃、私は友人を連れてゲーセン目的で新宿へ行ったのですが、そこでスポーツランド新宿西口店で50インチのストIIダッシュをケンでプレイしていきました。当然周りには常にギャラリーがいる状態でしたので、ちょっと緊張しながらプレイしていったのですが、3段昇龍拳がバリバリ決まり、途中乱入してきたザンギエフにも3段昇龍拳を決めストレート勝ちしたこともあり、この時のプレイは未だに印象に残っているほど気分の良いものでした。

しかし以降の夏休み中にはあまりゲーセンには行かず、学校が始まるとソニックウイングスにハマり久々にシューティングの面白さに気付くようになると、ダッシュの対戦はほとんどせず、私の対戦人生はほぼ終わりを迎えました。



あとがき

ダッシュのテーマは初代との違い、はめ技、そして全国大会と話題が揃っていましたので、あっさりと完成させる事が出来ました。キャラクター紹介はターボにあるのにダッシュにないと言うのはおかしい、と最近思いましたので急遽作成したものです。攻略は初代で懲りましたので、キャラクター別にはしませんでした。





inserted by FC2 system