レイディアント
シルバーガン

SS トレジャー 1998年7月23日発売

5800円 CD-ROM

縦スクロールシューティング

バックアップメモリ対応

十字キー 自機の8方向移動

ボタン1 バルカン
 ボタン2 ホーミング
 ボタン3 スプレッド
     ボタン4 ホーミングプラズマ
   ボタン5 ワイドショット
      ボタン6 ロックオンスプレッド
      ボタン7 レイディアントソード
    (ボタン配置は任意設定可能)



本当に魅力のあるゲームとは
91年に発売されたゲーメスト増刊のザ・ベストゲームのBEST60の表を見ると、シューティングファンであればある事に気付くだろう。そう、BEST30入りした作品はほとんどが世界観やBGMを重視したゲームであり、対極の東亜系の縦シューは1作品も入らなかった事だ。

東亜系も究極タイガーを筆頭に数多くの名作を生み出してきたし、インカムと言う点では全くひけをとらないのだが、やはりプレイヤーの記憶に残る名作と言うのはプレイしていて面白い事以上のプラスアルファをプレイヤーに与えてくれるゲームである、と言う事なのだろう。ゼビウス、グラディウス、ダライアス、ファンタジーゾーン、ナイトストライカー…全てその系譜に位置してきたゲームばかりだ。

しかしシューティングは直後に冬の時代を向かえると、数少ないヒット作であったソニックウイングスの影響からわかりやすい東亜系の作品ばかりを発売するようになった。それが功を奏したか、90年代中盤にはそれまでの低迷からようやく息を吹き返したシューティングゲームであったが、どれも似たようなゲームばかりであり、世界観と言う点ではあきらかに過去の名作群に見劣りしていた。

確かに面白いゲームは多かったし、またロングヒット作品も生み出したのは事実なのだが、古参のゲーマーにはどうも物足りない感はあったし、また似たようなゲームばかりではいずれ飽きられてしまうのは必然とも言えた。


そんな時、トレジャーの井内氏がこのままではいけない、と言う覚悟で世に送り出したのがこの「レイディアント シルバーガン」であった。東亜系のシューティングがずらりとゲームセンターに並ぶ中、緻密なまでに設定されたストーリーにグラフィック、そしてかつてのアイレムシューティングのように細かい操作や数多くの武器が用意されたこのシルバーガンは、採算は最初から度外視しているような作品であり、まさに自らの理想をそのまま形にしたゲームであった。

当然新規のゲーマーからは否定的な意見も見られたが、古参のゲーマーからすればかつての名作群に敬意を表した上でのオマージュを取り入れたシルバーガンはまさに涙物の作品であった。

無論世界観だけでなく、ゲームとしての完成度も異常なまでに高く、90年代所か20世紀のゲームを代表する作品と言っても過言ではないほど素晴らしい作品であった。


期待感
この「レイディアントシルバーガン」は98年の5月にアーケードゲームとして発売され、そのわずか2ヵ月後にSS版が発売された。トレジャーは一般的知名度こそ高くないものの、セガハードにおいて非常に質の高いアクションゲームを発売していた事からマニアには絶大な支持を受けており、それを受けてかSSの雑誌も発表当時から大きく記事を掲載していた。

シルバーガンと言えばSSマガジンが異常とも思えるほどのプッシュをしていたが、ライバル誌のSSファンも負けず劣らずの扱いであり、発表時には井内氏のインタビューまで掲載するほどであった。


ただ5月にはDCが発表され、完全にSSは末期のハードと以降していたためにそれほどのプッシュを受けながらもセールスは芳しくはなく、初動は1万3000本前後で終わり最終的には3万本程度であった。

しかし、その後異常なまでの完成度の高さと、尋常ではない面白さが次第に評判を呼んでいき、中古市場の値は上がるばかり、SSの新品の扱いがなくなると価格の2倍以上での取引が当たり前となっていた。

無論プレイした事のない人にとっては、一体そこまで払ってプレイするほどの価値があるのだろうか、と疑問に思うだろう。しかし一旦プレイしてしまえば、そんな疑問は一瞬で解決してしまう。



ゲーム紹介
ゲーム内容そのものはまだ公式ページが存在するので、大まかな概要はそちらを見ていただければいいだろう。

シルバーガンをプレイする上でまず驚かされるのはやはりその操作性だ。シューティングの主流であるショット+ボムとはまるで対極的なボタン配置であり、標準配置こそ3つであるが同時押しによる武器もあるため、実質6ボタンゲームと言って良い。よって一見すると難しそうな事この上ないのだが、何の事はない、数回プレイすればあっさり慣れてしまうだろう。ただ慣れない内はやはりゲームを楽しめないと思うので、アーケード版ではその辺りでインカムを損していたかも知れない。


面構成も独特であり、3面から始まり2,4面の分岐、それから5,6,1面へと進行していく。分岐は当初は予定されておらず続けての構成だったようだが、井内氏いわく長時間プレイになる事によりオペレーターから苦情が来たため、苦肉の策で分岐させたと言う。よって家庭用のSSモードでは分岐はしない。

そしてシルバーガンの面白さの本質と言えば、何と言ってもスコア稼ぎだ。


チェーンコンボ
シューティングの宿命として、ゲームに慣れると前半がかったるくなる、と言う欠点があった。よって後半で詰まってしまうと、どうしても簡単な前半をプレイするのが面倒となり、これをどうにかして回避させる事がメーカーの大きな使命であった。

その中で成功したと言えるのが彩京であり、前半をランダム面にする事で同じ面でも難易度を変えさせる事に成功し、90年代の主役にのし上がる事になった。しかし最初は成功したかに見えたその方法も、結局はプレイヤーが慣れるに従い難易度の向上をせざるを得なくなり、元の木阿弥となってしまった。


そこでシルバーガンが取り入れたのが格闘ゲームでお馴染みの「チェーンコンボ」だった。同じ色の敵機のみを細かいショットで撃ち続けると言う、当時のシューティングの概念の完全に真逆を行った発想であるが、これが緊張感の持続と言う点では大成功であったのだ。

つまり3面開始直後から実に細かく完璧な操作を要求され、一度ショットのミスをしただけでもゲーム自体が終わりと言う感のある展開から始まってしまうため、何度プレイしても集中力が散漫になる事はないからだ。これによりシューティングの問題点であった前半面の飽きを、シルバーガンではコンボと言う手段を使いあっさりと解決してしまった。


もちろんコンボは前半面だけの要素ではない。「スペースインベーダー」から始まった日本のシューティングの歴史は、動く敵を単発のショットで狙い撃ちする、と言うゲーム性から始まった。誰でも1度は縁日の射撃のゲームをした事があると思うが、まさに当時のシューティングの面白さはそれと同じだった。

次第に基板の性能が上がるにつれ、大量のキャラクターを表示させる事が可能となり、そのゲーム性は薄れていき90年代当時にはもはや見る影もなかった。その現状を憂い、古きよき時代の面白さを再現しようとしたのが井内氏であり、このシルバーガンであった。


特に4面後半で黄色の敵機のみをひとつずつ狙い撃ちする場面は、まさにあのギャラクシアンを彷彿させるものであり、単発ショットで狙い撃ちすると言うゲームの原点とも言える面白さを我々に思い起こさせてくれた、また思い知らせてくれたものだ。


スコアとウェポン
ゲームがまだ白黒でしか映らなかった時代から、常に存在していたのが「スコア」だ。それはアーケードゲームだけではなく、ゲームウォッチ、そしてファミコンと場所や機器が異なっても変わる事はなく、いかにして高い点数を取るかが絶対の目的だった。もちろんそれがあったからこそ人々はゲームに熱中し、また他人との競争意識も自然に生まれてきたものだ。

しかし家庭用でRPGが発売されると、スコアの概念がないゲームが当たり前となっていき、アーケードの方でも難易度の高騰や、2周エンドゲーム、そして対戦格闘の出現などから一部ハイスコアラー以外にとってスコア稼ぎと言う意味は薄くなるばかりであった。

そんな状況を憂いた井内氏が、もう一度ゲーマーにスコア稼ぎの楽しさを知ってもらおうと考え出したのが、スコアとパワーアップを関連させたシルバーガン独特のシステムだ。これにより最初から絶対にスコアを稼がないとクリア出来ないシステムなため、一見すると面倒に思えてしまう。しかし実際は全く逆であり、稼げば稼ぐほどゲームが楽になると言うシステムは楽しい事この上なく、これもシルバーガンを語る上で欠かす事の出来ない大きな魅力と言えた。

無論スコアにはコンボが大きく関わってくるため、パターンを突き詰めると毎回完璧なパターン化を要求されるようになるが故に、その辺りでも賛否両論は分かれてしまうのだが、これは後で後述しよう。


演出とBGM
シルバーガンの優れている部分は決してゲーム性だけではない。ST-Vと言う、当時としては型落ちの感もあったSS互換基板を使用していながらも、そのグラフィックは見事な事この上なく、ゲームをしている人も見ている人も見とれてしまうほど美しいものであった。

ポリゴンと言う点ではさすがに見劣りするとは言え、ST-Vならではの回転スクロール機能を存分に活かした背景の出来は素晴らしく、また同基板では困難とされる半透明の演出も難なく行っているため、作るところが作ればST-Vでもまだまだいける、新ハードなんていらない、と言う事を身をもって証明してくれたものだ。


もちろんグラフィックだけではなく、崎元仁氏作曲の名曲群もあまりにも素晴らしい。シューティングのBGMと言えばやはり勇ましいメロディと言うイメージが強いが、このシルバーガンではクラシックを基調とした大変に格調高いBGMに仕上がっている。もちろんメロディだけでなく音色も大変に凝っており、初めて聴いた時はこれが内蔵音源だとは到底思えなかったほどだ。各ステージの演出とのシンクロ具合も素晴らしい。そして曲数の少なさも大きな特徴だ。

5面までメインとなるBGMは7曲しかなく、さらに分岐がされるためゲーム中は5曲しか聴けない、つまり初代グラディウスよりもBGMが少なく、それでいてクリアにその3倍近い時間を要してしまうのだから、普通に考えると途中で飽き飽きしてしまうと思うだろう。

しかしあまりにもゲームの雰囲気に合っているためか実際は飽きてうんざりする事など決してなく、それどころかずっとこのまま流れていて欲しい、と思ってしまうほどであり、曲が少ないゆえのハンデなど全く感じさせない。

BGMが一桁だったのが当たり前だった時代は、それだけに1曲1曲の印象が強くなり、ちょっとプレイしただけでも簡単に口ずさめてしまうものだった。ゼビウス、ドルアーガの塔、パックランド…発売から20年以上経った今でも、当時プレイしていた人は決してVGMは忘れる事はないだろう。

しかし最初は一桁だったBGMも、容量が増えていくにつれ増えていき、RPGになると20、30曲は当たり前となった。

一見すると豪華に思えてしまうのだが、デメリットととして多くなればそれだけ1曲辺りのかかる時間が短くなり、当然1曲ごとの印象は薄くなるばかりとなってしまった。よってファミコン時代のマリオやドラクエのように一般人まで知っているほどのBGMはなくなり、かつてはあれほどの売り上げを誇ったドラクエのアルバムも、シリーズを重ねる事に話題がなくなってしまった。

ゲームのBGMは多ければ多い、と言うものではないのだよと言うメッセージも、シルバーガンに込められた思いのひとつであろう。




名作へのオマージュ
最初に触れたよう、このシルバーガンは似たような縦シューばかり居並ぶゲーセンへのアンチテーゼとも取れる作品であるが、単にそれだけでなくゲーム中のあちらこちらにかつての名作シューティングへのオマージュと取れる要素を含ませていた。

それはインベーダー時代からありとあらゆるゲームが含まれているのだが、特に井内氏は沙羅曼蛇やイメージファイトの大ファンと言う事もあって、その2社のゲームを思い起こさせるキャラや場面が多く、これらのゲームにハマッた記憶のあるプレイヤーなら感動する事は必至であると同時に、本当にこれを作った人はシューティングが好きなんだな、と思わせてくれる。

私自身もそれなりにシューティングはプレイしてきたつもりであるが、そこまでの思いを馳せさせたゲームはシルバーガン以外にはとても見当たらず、プレイ中も目頭が熱くなってしまったほどだ。これはアーケードでも家庭用でも、80年代の黄金期を生きてきた世代であれば誰しもが感じる事だろう。


パターン性
シルバーガンを否定する人たちに最も共通する意見と言うのが、やはりパターン性が強すぎる、と言う点だろう。シューティングの魅力は爽快感、弾よけ、そしてパターンにはめられないランダム性こそにある、と言う意見は確かにその通りだし、個人的にも否定はしない。しかしパターン性重視のゲームにしかない魅力が存在するのもまた事実だ。

初めてシルバーガンをプレイして全てのコンボが完璧に取れる、と言うのはまず不可能であり、それどころかゲームそのもののシステムも良く理解出来ず、全く面白みを感じないまま終わってしまう事もままあるだろう。



その分敷居が高いのは確かであるが、他人のプレイや攻略などを見ていくうちに、次第にゲームのコンセプトを掴んでいき段々とゲームの楽しさの本質を理解していくあの過程の面白さは、シルバーガンならではだろう。

パターンは一旦完成してしまえば後はそれを繰り返していくだけだが、一度極めれば後は楽勝と言うほどシルバーガンは甘くはない。コンボを完成させるためには常に寸分の狂いも許されない完璧な操作が要求されるため、常人にとっては並大抵の集中力では済まされず、毎回極度の緊張状態の中でプレイしなければならないのだ。特に最初から最後まで1度たりともミスが許されない5面の緊張状態と言うのは尋常ではない。

かつてはアーケードの華であったパターン性重視のシューティングと比較しても、シルバーガンのゲーム性はガチガチのパターンゲームと言えるが、グラディウスVの項でも触れたよううまくなればなるほどゲームを支配していくかのような征服感は、間違いなく並大抵のゲームでは体験出来ないものだ。


ゲームってこんなに面白いものだったのか
シルバーガンを代表する魅力を思い付く限り紹介してきたが、やはり最終的なゲームの本質と言うのはプレイしていて面白いか、面白くないか、その2択しかない。ではそのシルバーガンはどうなのか、と言えば…面白さはあくまで個人の主観が強い部分であるが、はっきり言う。少なくとも私にとって世界中のありとあらゆるゲームを探しても、これほどまでに面白いゲームは存在しない、と。

友人のゲームウォッチで初めて電子ゲームに触れて以来、ありとあらゆるタイプのゲームをプレイしてきたつもりだが、ここまでひとつのゲームに夢中になったのはシルバーガンだけだ。


それどころかこの項のタイトルのよう、「ああ、ゲームって本当はこんなに面白いものだったのか」、そう、ゲームって本当はこんなに面白いものなんだよ、と私に言い聞かせてくれた唯一のゲームであった。

1面の真のメッセージの中に、「ゲームそのものが楽しいと思っていた頃の感覚はなくなってしまった」と言う台詞があるが、私にとってはゲームに本当に熱中していた頃の気持ちをよみがえらせてくれた、それがシルバーガンと言うゲームだった。−これから先、どんなにハードが進化しようとも、私にとってシルバーガンを超えるゲームは現れないだろう。



当時の思い出
シルバーガンを初めてプレイしたのは大和の某ゲーセンだったのですが、さすがに操作もコンセプトも分からないままプレイしましたので、面白さのかけらも感じないまま終えてしまいました。SS版も最初は面白さが良く理解は出来なかったのですが、やはりSSの限界を超えたかのようなグラフィックとBGMには素直に素晴らしいと思ったものです。

直後に秋葉原の某店に同人のビデオがある事を知った私は、早速お店に行って入手したのですが、あまりにも芸術性の高いプレイに見ているだけでも本当に楽しめたものです。



それでようやくゲームの本質を理解した私は、後は上記のよう自分でも信じられないぐらいに熱中し、あの飽きっぽい自分が何度後半でミスしてもすぐに最初からやり直してしまうほど、寝る時間を忘れてまで何度も何度もプレイしていったものです。

そんな状態が1ヶ月ほど続き、総プレイ時間も100時間を超えながらも一向に上達はせず、何とかノーマル設定で1コインクリア出来るぐらいまでのレベルがやっとでした。上手い人はPARを使っていると言うので、しばらくして購入し使ってみたのですが、さすがにブランクがありましたので以前のようなプレイをする事は出来ませんでした。



あとがき

本当はもっと面紹介とかして、明らかに別格的存在として扱いたかったのですが、やり込んでいた時から随分と時が流れてしまったため、どうしてもそこまで行う気力はありませんでした。それでもここまで私が好きになったゲームなのですから、いつかは完全版を作成したいものです。

PLAYSTATION AND SEGASATURN FOREVER 90's


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