SS チュンソフト 1998年1月22日発売

5800円 CD-ROM

サウンドノベル

オートセーブ


MOSHIMO
「もし、野茂英雄が大リーグに挑戦していなかったら−」

ここ数年の野球ファンであれば一度は考えた事があるであろう命題だが、そうなっていたらもちろん「95年のナリーグ新人王と奪三振王は別の投手になっていた」だけでは済まされない話であり、毎日毎日MLBの情報がニュースで流れる今日は存在せず、イチローも松井も日本で普通に活躍し、MLBの最多安打の記録も今なお「257」のままだっただろう。

よってたったひとりの野茂の決断が、日米野球界の運命を大きく左右する一大事となっていったこれらの例からわかるよう、自分の行動は自分自身の運命のみならず、他人の運命をも左右してしまう可能性も同時に常に存在している。


何気ない自分の選択が、時には他人を幸せに、時には他人を不幸に至らす…まるで関係ない赤の他人同士でも人間と言うのは実に不思議な繋がりと隣り合わせで生活しているものだが、そんな人間同士の不思議な繋がりをゲーム中で再現したのがこの「街」だ。

現実の世界で選択出来る道はひとつだけであり、どちらかを選択した後は「もうひとつ」の選択肢は未来永劫やって来る事はないが、もちろんこの「街」ではプレイヤー自らストーリーに参加出来ると言う映画や小説では決して真似の出来ないゲームならではの特徴を存分に活かし、様々な人々の、様々な運命を描いた物語に仕上がっている。




発売当時
この「サウンドノベル 街」は1998年にチュンソフトよりSS用ソフトとして発売されたゲームだ。

発表は97年の3月頃であり、まだまだ発売は先の事でありながらもいきなり中村氏らのインタビューが掲載される雑誌もあったりするなど、ゲームマスコミの注目度は大きく、実写画像6000枚、シナリオの執筆に5年と言う話題からもスケールの大きさを感じさせた。

実写画像は96年の10〜11月に3班に分けて撮影され、掲載されたゲーム中での画像も美しく見た目のインパクトは十分なものであったが、それまで実写のゲームと言えばB級アイドルのゲームが多かったせいか、ゲームファンにとって実写と言うのは実はあまり評価の高いものではなかった。

それまでのサウンドノベルとは一風異なるゲームのシステムも誌面を通してからではいまひとつ理解し辛く、さらに開発当初は拮抗していたはずのPSとSSの関係も、発売を迎えた頃はすでにSSは風前の灯火となっていたと言う不運も重なり、期待とは裏腹にセールスは伸びず6万本程度で終わった。

ゲームとしての完成度は尋常ではなく、プレイした人たちは皆その作り込みの凄さ、シナリオの見事さに感嘆し、それまで「街」をプレイしなかった事を悔やむほど素晴らしい魅力に満ちたゲームであるだけに、「面白いゲームが必ずしも売れる訳ではない」と言う家庭用ゲーム業界の嫌な風潮を代表するゲームと言えた。



発表当時のインタビューですでに続編の話が出ていただけに、今なお続編の発売が常に待たれるゲームであるが、やはり一目見て制作費や時間が相当かかるだろうと思わせられるゲームなだけに、採算のめどが立たず頓挫してしまったのだろう。












ゲーム内容
主人公とシナリオは計8つ用意され、プレイヤーはその中からひとりを選んで進行していく。

もちろんどの主人公を選択してプレイするのかはプレイヤーの自由だが、普通に進んで行くとほとんどバッドエンド、運が良くても「つづく」となるため、同じ主人公で1日ぶっ通しでクリアする事は絶対に出来ない。

よって詰まったら、バッドエンドの場合はその主人公と関連のありそうな別の主人公を選択し、うまくバッドエンドを回避出来そうな選択肢を選んでいけば、お互いがうまく先へと進む事が出来る。



「つづく」の場合は他のシナリオの同時刻のTIP→ZAPポイントからZAPPINGすると、そのシナリオの先が見れるようになっているが、こちらはお互いまるで関係のないシナリオ同士からのZAPがほとんであり展開が読み辛く、TIPを読み飛ばしてしまったら一気に詰まってしまう可能性が高くなるので、ZAPポイントを常にメモしながら進むのが攻略のコツだ。

基本的にプレイヤーがやる事は以上の通りであり、後はずーっとシナリオを読んでいくだけであるため、やはり解説だけでは面白みが伝わりにくいのが難点ではあるのだが、実際にプレイしてみるといかにこれらのシステムが素晴らしいかすぐに気付く事だろう。



ゲームをプレイして間もない時の1日目にある主人公でプレイしている途中、A-Bの選択を迫られる。普通のゲームであればどちらかを選択するかでその後の展開が大きく変わるはずだ。しかし多少主人公の行動に変化が生じただけで、その後の展開は一切変わらない…。画面右下には重要マークが出ているのに、一体あの選択肢は何だったのだろう? プレイヤーには釈然としない疑問が頭に残ってしまう。

そうこうしている内にその主人公ではバッドエンドに。それまでの選択をどう選んでもこの展開は変わらない。諦めて他のシナリオをプレイする。その主人公で進行していくうちにどこか見覚えのある場所に出た。そしてどこかで読んだような場面…ハッ! もしや! すぐに元のシナリオへ行き先ほどの選択肢の場面へ移動、そこで別の選択肢を選択、再び先のシナリオへ…今度は何事もなく進めた。そうか、さっきのシナリオの選択はこのシナリオに影響していたのか…!

初めにも書いたよう、人の行動は何の関係もない赤の他人の運命も左右してしまう、そんな人間の宿命をゲーム中で再現し同時に複数の結末も同時に見る事が出来る…ゲームにここまで感動させられたのはいつ以来だろう。

前述のよう「つづく」には多少分かり辛い部分もあるし、またシナリオの展開によっても面白みのない話も存在するため、多少忍耐力を強いられる展開もあるが、やはり先を見たさに様々なシナリオをプレイし、ようやくそれに繋がるZAPポイントを見つけ気になって気になって仕方がなかったシナリオの先を見れる、とわかった時のワクワク感と言うのは何物にも変え難いものがあり、やめようにもやめられずプレイヤーは「街」の虜になってしまうのだ。


またもうひとつゲームを盛り上げるのにも欠かせない膨大なBGMの出来もなかなか良く、主題歌を歌う鈴木結女の映画ばりのシネスコサイズのPVなども鑑賞する事が出来る。













実写
見ての通りこのゲームは全て実写だ。

雑誌で発表された当初はかなり綺麗に見えたものだったが、やはりそれなりに圧縮され高解像度でもないため、WEGAなどにRGB出力した画面では若干粗が目立つので、S端子などの方がベストだろう。

そして実写と言う事はもちろん登場人物も実在する人物たちであり、それぞれ本物の役者・モデル・芸人さんたちが演じているが、脇役には著名な方も多く参加しているものの、主人公の8人は市川役のダンカン氏以外はTVではそれほど馴染みのない人たちだ。



有名人をもっと起用すれば一般人にも大きくアピールする事が出来たのに、あえてそれをしなかった所にあくまでゲーム性で勝負する、と言うチュンソフトの気概が感じられる。

主人公の中では細井美子役の北陽・伊藤さおりさんがちょっと前からテレビで見かけるようになったが、現実でも昨年度のいいともにおいてダイエットの企画が行われた。

こちらは3ヶ月で目標の40kg台にすると言うものだったが、あえなく失敗、罰ゲームとしてビキニ姿を披露する羽目となった。

ムービーも所々に挿入されているが、いわゆるシームレスの方式を取られているので、画像とムービーの境目は自然でとてもスムーズに移行される。



PLAYSTATION AND SEGASATURN FOREVER 90's


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