ARCADE MANIAC

アーケードマニアック 第29回


1982 NAMCO

『GALAXIAN』

文責:渋谷洋一

協力:二木康夫/斎藤 伸




複製合戦

『ギャラクシアン』は'79年にナムコから発売されたスペースシューティング。'79年といえば世界のあらゆる先進国に衝撃を与えたあのインベーダーブームの最盛期。そのお祭り騒ぎのようなときに『ギャラクシアン』は登場。敵エイリアンの大きさや数、配列がタイトーの『インベーダー』にとても似ていた。
その画面構成があまりにも似ているので、私は初めてこのゲームを見たとき、これは当時どこにでも見られた『インベーダー』の亜流のひとつだろうと思った。

だが、一度コインを投入し、スタートボタンを押した瞬間、そんな妄想は吹き飛ぶことになった。
『インベーダー』では左右にしか移動しなかったエイリアンが、上方から次々に螺旋を描くように降下、攻撃してくる。爆弾の風切り音に似た「ヒュー」という音を発しながらだ。「おおっ」。心の中で歓喜の声が思わず上がったのを覚えている。

なめらかで美しい動きをするカラフルなエイリアン。ボスとその護衛を順序よく撃ち落とすと得られるボーナススコア。それに空襲警報が鳴りっぱなしになったような効果音は、いやおうなしに臨場感を盛り上げた。

サウンド、グラフィック、ゲーム性。とにかくすべての要素があの『インベーダー』を凌いだ。結果『ギャラクシアン』は大ヒット。ポストインベーダーの座を奪った。そしてその事実は『インベーダー』とその亜流で溢れかえっていた業界に新風を送り込むことになった。

それまで『インベーダー』の複製基板を造っていたコピーメーカーは、こぞってその対象を変更。しばらくすると、街のゲームセンターや喫茶店に置かれたきょう体の中に、そのコピー基板は浸透した。そして秩序のないコピーメーカー郡はオリジナルをはるかに超える数の基板を製造。すぐに供給は満たされ、コピーメーカーはコピーの対象を失うことになった。

そんな状況な中から、コピーメーカーの苦肉の策ともいえる作品が続々と造られていった。
『パートII』や『パートIII』などと呼ばれていた『ギャラクシアン』である。それらは多少のグラフィック変更やアルゴリズムに少し手を加えただけの短絡的な発送で創られたものだった。

例えば、ボスエイリアンの護衛であるレッドエイリアンのアルゴリズムを少しだけいじり、攻撃パターンを変えただけで『パート2』などとネームを変え、まるで新しいゲームかのように平然とゲームセンターに置かれていた。もうひとうは台形にフォーメーションされたエイリアンの集団が、長方形になるまでその出現数を増やした『パートIII』。

これはボスエイリアンとその護衛が、ズラッと横一直線に編隊を組み攻撃してきた。さらにボスエイリアンを撃ちもらすと護衛が復活し、再度攻撃を仕掛けてくるハードバージョンだ。

それらのパワーアップした敵に対抗するべく、自機の移動速度、弾の速度を上げた改良版もあった。そこでは『パートIV』と呼ばれていた。だがパートの次に続く数字はいい加減で、地方により呼び名や特徴が異なっていた。それはコピーメーカーの秩序のなさと、地方にそういった膨大な数のコピーメーカーが存在したことを意味する。

私がプレーしたコピー作品の中に、自機の弾が同時に2発、発射されるものがあった。何面かをノーダメージでクリアすると、自機のサイドにもうひとつ黄色い弾が現れパワーアップするものだ。今思えば、あれは『ギャラクシアン』の続編『ギャラガ』の前身なのかもしれない。


GAMEST AND FAMITSU REPRINTED EDITION


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