サムライスピリッツ

SNK 1993年7月発売

NEOGEOシステム 対戦格闘

8方向レバー キャラクター操作

Aボタン:弱斬り
Bボタン:中斬り
Cボタン:弱蹴り
Dボタン:中蹴り



和風格闘
「サムライスピリッツ」は、93年にSNKがネオジオ用ソフトとして発売した対戦格闘ゲーム。

「龍虎の拳」から続く「100メガショック」シリーズのひとつであったが、発表当時は「ワールドヒーローズ2」がかなりの注目を集めており、発売はこれまた大注目ソフト「餓狼伝説SPECIAL」の発表と被るなど、表現は悪いがローテーションの谷間的なイメージが強かった。

実際ゲーメストでも最初の扱いはさほど大きなものではなかったし、前述の表現に近い読者イラストが掲載されていたりもしていたため、多くの人がそのような位置付け的ゲームと認識していただろう。

しかし…実際は他のゲームにない刀で斬る爽快感、三味線や尺八を中心とした心地よい和風BGM、そして超人気を誇ったナコルルを筆頭とする個性豊かなキャラクターたちのおかげでその人気はうなぎ上り、夏休みのゲームセンターを大いに盛り上げていった。

もちろんゲーメスト増刊も発売され、さらにゲーメストビデオは初の120分収録、そしてサントラCDを始めとするキャラクターグッズも馬鹿売れするなど、メディアへの影響も凄まじいものがあった。

そして年末、スーパーストIIや餓狼SPと言った名作の続編にダントツの大差を付け、見事にゲーメスト大賞の栄誉に輝いた。

それだけでなく、ベストVGMや演出、キャラクターなどストII以来の部門賞をほぼ独占、さらにSNKを好きなメーカー第1位に輝かせるなど、サムスピの残した功績と言うのは実に輝かしいものがあった。


ゲーム内容
サムライと言う名を冠するだけあり、従来の格闘ゲームのパンチボタンは全て「斬る」ボタンとなっている。ただ餓狼とは配列が異なっており、さらに通常攻撃の強ボタンが同時押しとなっているため、若干操作はシビアであった。

よって中にはストIIコンパネを使用し、ストIIと同配置にボタンを割り当てていたゲーセンも見られたが、もちろんそこまでの技術を要していたゲーセンはさほど多くはなかったため、まずは同時押しに慣れる事が第一であった。

キックボタンはそのまま蹴り技であるが、やはり刀の世界で蹴りと言うのはどうにも違和感がある。


よってどうしても斬り技中心の攻めとなってしまうのだが、蹴りもゲーム上必要不可欠な技であるため、相手に勝利するにはある種プレイスタイルを犠牲にしなければならないものがあった。

CPUは非常に強く、中盤以降はパターンにはめないとほとんど勝ち目はない。そのパターンと言うのは一種の投げはめなのであるが、当然ゲーム自体は物凄くつまらなくなるだけに、CPU戦をクリアするためにはかなりの忍耐が要求された。

最終ボスは天草四郎時貞であり、奴を倒すとクリアとなる。しかしこいつも相当に強く、ゲージを半分以下に減らすと手が付けられなくなるため、まともに戦っては勝ち目は全くない。

よってある程度のダメージを与えたら逃げ回って時間切れを狙うと言う、これもまた大変にセコイ戦術が必要だった。

以上のようにCPU戦はかなりの難点が見られ、特に格闘ゲーム初心者には厳しいものがあったものだ。しかしそのためにゲーセンではなくわざわざネオジオ本体を購入してまでプレイするプレイヤーも多く見られ、餓狼と共に本体の普及に大変な功績を果したものだ。








たたっ斬る爽快感
サムスピ最大の魅力は、やはり刀で相手をぶったぎる爽快感だ。パンチボタンが刀に変わっただけの事ではあっても、ここまで刀を効果的に使用したゲームと言うのは過去意外なほどに少なかったため、これだけでも新たな格闘ゲームの可能性が広かった物だ。

そして普通に考えれば殴る、蹴るよりも刃物の一撃の方が遥かにダメージが大きくなるはずだが、もちろんその点も考えられており、キャラクターにもよるが、強斬りなどは通常技でありながらも最大級のダメージを与える事が可能だ。

その最たるものがご存知覇王丸の遠距離強斬り、通称「斬鉄閃」だ。

ジャンプ強斬りからの斬鉄閃の2段が決まればそれだけでゲージを半分近くに減らす事ができ、怒り状態であるならそれこそ致命的なダメージを与える事が出来る。

これは他のゲームではまず味わう事の出来なかった爽快感があるため、最強キャラでこそないものの、これだけを決めたいがために覇王丸を使うプレイヤーは私を含め実に多かった。

また斬ると言う技がある以上、血しぶきなどの演出も随所に見られた。これに関しては設定で血しぶきを白にする事が可能であるが、それでも2本目決着の際にはラーメンマンVSブロッケンマンの如き演出があったりして、演出的には残酷な面も多く見られた。



ナコルルの異常人気
サムスピは主人公の覇王丸を始めとして、計12人のプレイヤーキャラが用意されている。その誰もが非常に豊かな個性を発揮しており、このキャラクターの魅力もサムスピを大ヒットに導いた大きな要因だ。特に覇王丸とライバル関係という設定である橘右京は、ゲーム中の設定通りに本当に女性ファンを引き付け、女性ゲーマーを増やす事に一役買ったものだ。

しかしサムスピを代表するキャラと言えば、間違いなくナコルルであろう。発売直後から異常な人気を博し、ゲーメストアイランドやサムスピ増刊では、例によって思いっきり読者によって美化がなされたイラストが怒涛の如く溢れ帰り、格闘ゲームの初代女王である春麗以来の人気を巻き起こした。


餓狼の不知火舞とは対極的も良い所なのだが、やはり露出は高くても高慢な女よりも、おしとやかで優しい女性の方が男ゲーマーは惹かれるのだろう、と言う事を改めて証明させた。

ただ実際の有名人すら好きになった事がない自分としては、何故ドット絵のキャラクターにここまで熱心になれるのかさっぱり分からなかったものだ。

しかしサムスピに早いうちからハマッていた、一般ゲーマーの友人でさえも「ナコルルは良い」と言い張っていたので、そんな友人でさえもそう思うのだからコアゲーマーの人気を呼ぶのも当然だったかも知れない。


それでもこの記事を書くために初めてナコルルを選択してみたのですが、確かにその声やデモ画面などを見る限りでは人気が出るのも分からない事はないな、とは思いました。

もちろん年末のゲーメスト大賞のキャラクター大賞ではダントツの1位に輝き、さらに翌年の「ギャルズアイランド3」でも1位に輝くなど、ワルキューレ、春麗に続く3代目のゲームキャラ女王にまで君臨した。








和楽器
サムスピの特徴はもちろんグラフィックやキャラクターのみではない。ネオジオのPCM音源を活かしまくった和風テイスト満載のVGMも、サムスピを代表する実に重要な要素だ。

もちろん単純に和楽器中心なだけではなく、ガルフォードなどの西洋キャラは和洋のミックス、柳生十兵衛に至っては風の効果音のみなど、斬新なVGMも取り入られた。

本作のサントラは他のネオジオ同様サイトロンの1500シリーズとして発売されたが、こちらも売れに売れ、ゲーメスト大賞ではVGM大賞、アルバム大賞いずれも1位に輝いた。





個人的な思い出
サムスピの発売当時、私は戦国エースにハマッており、その頃からアンチ格闘ゲームに走りつつあったものですから、サムスピは完全にスルーしていました。秋頃になりようやく餓狼の初期3部作をプレイし始めたのですが、サムスピだけはなかなかプレイする事はありませんでした。

理由としてはサムスピ辺りから新規のプレイヤーが出始めた事が最大の要因でしょう。彼らはネオジオ以外のゲームには見向きもせず、挙句の果てには「スコアネームって何ですか?」とゲーメストに逆に質問するような輩まで居たほどですから、シューティング至上主義者の私としては彼等と同じゲームをプレイする事はプライドが許さなかったのです。


結局12月に初プレイとなり、まともにやり込み始めたのは翌年になってからの事でした。

個人的に特にめぼしいキャラはいなかったので、適当に主人公である覇王丸を選択してプレイして行ったのですが、プレイしていくうちに次第に相手をたたっ斬るサムスピならではの爽快感にハマり始めていきましたので、ゲーメスト増刊やCDなども購入していったものです。

攻略を覚えてからはCPU戦は割とすぐにクリアは出来たのですが、前述のよう後半は投げはめ中心ですし、天草も時間切れ勝利でしたから、CPU戦に限って言えば面白いとは思わず、クリアしたのは1回こっきりとなりました。


その後は別のキャラでプレイし始めると言う事もなかったため、結局ゲーセンでは覇王丸以外のキャラは使う事がありませんでした。

単純に技を覚えるのが面倒と言う事もあるのですが、やはりあの斬鉄閃の気持ち良さは何物にも変え難いものがありましたので、お金を払ってプレイする以上は覇王丸以外は選択したくはなかったのでしょう。

よってプレイしていた期間そのものはかなり短いため、長い間プレイしていった餓狼2やスペシャルに比べると思い入れも薄い部分はあるのです。


しかしそれでも私にとっては家庭用ネオジオと同時に購入したソフトでもありましたし、またゲーマー熱が最も高かった頃に人気のあったゲームでもありましたから、やはり今でもサムスピと言えば初代しか思い浮かばないほど、私にとっては思い出深いゲームのひとつとなっています。














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