ウィザードリィ

アスキー 1987年12月22日発売 

5800円 2M+64KRAM

3DダンジョンRPG

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家庭用初のWIZARDRY
「ドラゴンクエストII」が発売された頃、当時週刊少年ジャンプでライターを務めていた木村初氏が「ファミコン神拳110番」という本を出したが、その本の中で自らが最もハマったゲームかつRPGの元祖として紹介していたのが、APPLEII版の「Wizardry」というゲームだった。

それによりドラクエの参考となったゲームが「Wizardry」というゲームである、ということを私を含めた多くのユーザーが知ることとなった訳で、当然「あの」ドラクエの基礎となったゲームであれば誰もが興味を持った訳だが、ほとんどの人がAPPLEIIをプレイする環境はなく、紹介された記事からゲーム内容を想像するしかなかった。





しかし、その年の年末、意外にも早く我々ファミコンユーザーが「Wizardry」に触れる機会がやってきたのだ。

それが、この記念すべき家庭用ハード初のファミコン版「ウィザードリィ」だ。


ファミコン版の特徴
基本的な内容はAPPLE版や国産PC版に準じているファミコン版だが、元々マニア向けのゲームだけあって、ファミコンユーザー向けに難易度が合わせられている。

まず国産PC版では文章以外全て英語だったが、ファミコン版ではモンスター名もアイテム名も全て日本語表記された。

当たり前の話と言えば当たり前だが、それまでPC版は攻略本などでも全てアルファベット表記だったため、確固たる日本語表記というのがウィズには存在せず、発音は個々の感性に委ねられていた訳だから、このファミコン版で初めて「ウィズの日本語表記」というのが設定されたのだ。




また武器や防具名に関しては、+1、+2という表記から、「切り裂きの剣」、「極上の鎧」というように固有の名詞が付けられたが、PC出身者にはわからないという声も聞こえたため、オリジナルの英語名も選択出来れば良かったかもしれない。

その他のゲームシステムはPC版と変わらないが、石の中にテレポートしても即ロストはせず、死亡扱いとなりそのまま城へと運ばれるので、地下9,10階でのテレポートの怖さは激減した。

セーブは国産PC版と同じタイミングで行われるが、セーブというものはセーブ地点でセーブするのが当たり前と思われていただけに、絶えずセーブが行われるというのは驚いたものだ。



オプションも充実しており、文章の日本語、英語の切り替えや、ダンジョンの線画と塗り壁の選択、BGMの有無などが選択出来るようになっている。

特に個人的には英語の文章が凄いと思ったものだが、元々ビデオゲームというのは英語から始まり、さらにウィズはアメリカ製なのだから、今思えばまあ当たり前かというところか。

画面構成は国産PC版を参考にしているが、戦闘はAPPLE版に近いものとなっており、戦闘の敵グループのグラフィックしか表示されず、文章が占める割合が多いので、他のファミコンRPGを見慣れた当時としては若干物足りないものがあったが、それだけに文章の表現がとても細かい。



そしてPC版では、各呪文や罠の解除などは全て英単語を打ち込んでいくシステムだったが、ファミコンでは全てカーソルによる選択制となっている。

当然ファミコン版の方が遥かに楽に入力が出来るが、PC版の単語入力というのは実際に呪文や罠の解除の過程として捉えることも出来たため、PC版に慣れた人は若干寂しい気持ちもあるだろう。









グラフィックとBGM
そしてこのファミコン版ウィズを語る上で、絶対に欠かすことの出来ないのがモンスターとBGMだ。

PC版のモンスターは、色数が6色しか使えないAPPLE版はもちろん、国産PC版でさえヴァンパイアロードとウィルオーウィスプが同じという貧弱さだったが、このファミコン版の末弥純氏のグラフィックは非常に素晴らしい出来となっており、PC版を遥かに凌駕している出来になっている。

ファミコンRPGのモンスターと言えば、やはりドラクエの鳥山明氏の絵の印象が強い人が多いと思うが、モンスター独特の怖さやリアルさの表現ではウィズの末弥氏の右に出るゲームはないだろう。




BGMは作曲家の羽田健太郎氏が担当しているが、ウィズはAPPLE版も国産PC版もBGMが存在しなかったので、このウィズにBGMが流れたのはこのファミコン版が初めてだった。

羽田氏がゲームのBGMを担当したのはウィズが初めてだったが、とてもゲームの雰囲気に合ったものとなっており、地下迷宮の怖さや戦闘での緊張感をさらに倍増させてくれる出来となっている。









ウィザードリィの魅力〜キャラクター
これまではファミコン版ウィザードリィの特徴について主に語ってきたが、ここからはウィザードリィの魅力そのものについて語っていこう。

まず最初に語るべきウィズの魅力は、キャラクターだろう。

普通のフィールド型RPGのキャラと言えば、自由に名前こそ付けられるとは言っても、ストーリーが存在する以上「ただの冒険者」という設定はまずありえず、さらに今では画面上でも綺麗にキャラクターが描かれているため、主人公に自分をオーバーラップ出来ることなどほとんどないと言っていいだろう。





対するウィズのキャラクターと言えば、画面下のパラメータやキャンプ画面でしか確認することが出来ず、今のゲームに比べれば地味そのものだが、逆にイメージに縛られていない分、プレイヤーが自由にキャラに命を吹き込むことが出来るのだ。

名著として名高い「ウィザードリィのすべて」の友の会のコーナーでは、各プレイヤー思い思いのキャラクターが実に熱い思いを込めて紹介されていたが、皆が皆独自の世界観を築いていくプレイこそ、ウィザードリィならではの魅力と言えるだろう。







ウィザードリィの魅力〜戦闘
そしてRPGの重要な要素である、戦闘の面白さに関してもこのウィザードリィはずば抜けていると言えるだろう。

そのウィズにおける様々な戦闘の魅力の中から、他のRPGと比較した時に決定的に違うのが緊張感の凄さだ。

普通のRPGであれば、キャラクターが死んでも呪文や教会などで確実に生き返らせることができ、パーティが全滅しても、ゲームオーバーになってしまうFFなどの例外はあるものの、大抵のRPGの場合はお金が半分になるぐらいで、再び同じパーティで冒険を続けられることが出来る。





しかし、このウィズでは蘇生の手段こそ用意はされているものの、1回蘇生に失敗すると灰になってしまい、灰の状態で蘇生に失敗するとロスト、つまり完全にキャラクターを失ってしまうため、死への恐怖感が他のRPGとは比較にならないのだ。

もちろんこれはダンジョンが舞台であるという特徴を活かしているため、他のフィールド型RPGでもロストを導入しろ、というのは無理である以上、単純にウィズが優れている、とは決めつけられないが、ロストがあることによりキャラクターをとても大事にせざるを得ないため、この辺りがウィズの戦闘に独特な緊張感をもたらしている。





また全滅してしまうと他のRPGのように城から再スタートということはなく、その場に置き去りにされてしまうため、パーティ回収に別のパーティを育てる羽目になってしまうし、さらに運が悪いとロストしてしまうキャラクターが出る可能性もあるので、どれだけウィズにとって死というものが恐ろしいことががわかっていただけるだろう。

ただウィズでは行動ごとにセーブされていくが、戦闘では終了時にしかセーブされないため、戦闘中に死んでも終わるまでにリセットしてしまえば何事もなかったかのように再開出来るし、また外部記憶装置のターボファイルがあればロストしても、ロストする前のデータさえあれば問題ないため、実際はそう重大な局面に出会うことは少ない。




しかし、全滅しなくても、深い階で呪文が尽きてしまい、自力では到底地上に戻ることが出来なくなってしまった、ということもある訳で、リセット技があるとは言っても結局はキャラクターの状態に常に気を配ることには変わりはないのだ。

もちろん戦闘そのもののバランスも素晴らしく、グラフィックは先頭の1体だけであとは文字のみで、派手なエフェクトなど一切ないが、それでも前衛の直接攻撃と、後衛の魔法を駆使した戦闘はRPGの戦闘の本当の面白さを気付かせてくれる。

また戦闘における、緊張感とは別の要素として、レベルアップが楽しい、という部分もある。



普通のRPGでは、レベルが上がってもステータスが上昇しなければ意味がないのですが、ウィズではレベルが直接強さに関わっていますので、レベルの意味が大変重要なものとなっているのだ。

そのためレベルが上がれば敵への攻撃回数が目に見えて増えて行くし、罠の解除の確率も上がっていくため、とにかくレベルが上がっていくのが楽しくて仕方がないのである。

もちろん強くなりすぎるとほとんど無敵になってしまい、レベルが上がりすぎてしまうと初期の戦闘にあった緊張感など全くなくなってしまう、という欠点はあるものの、戦闘もキャラクターと並びウィズの大きな魅力のひとつであることは間違いのないところだ。




ウィザードリィの魅力〜キャラクターの年齢
ウィザードリィにおける、キャラクターのレベルや特性値以外の重要な要素として、キャラクターが歳を取っていく、というのも忘れてはならない。

最初は大体15歳前後の若者として始まり、宿に泊まったり、カント寺院で蘇生されるごとに歳を取っていき、50歳を越えてしまうとレベルが上がっても特性値が下がることの方が多くなっていき、レベルアップ時に生命力が2未満になってしまうとロストしてしまう、というように、人間の一生をそのままゲームに反映しているのだ。

ロストさせたくない場合は、特性値が下がり始めら冒険には出さず、いわば引退という形を取ればいいのだが、どっちにしろ冒険のパーティからいなくなることには変わりはなく、現実世界と同じように、年を取ったら第1線から身を引かなければならないリアリティさも、ウィズの持つ大きな魅力のひとつだろう。



個人的な思い入れ
私がウィザードリィというゲームを初めて知ったのは、当時週刊少年ジャンプのファミコン神拳担当のキム皇こと木村初氏が書いた、「ファミコン神拳奥義大全書」という本を読んだ時でした。

氏はAPPLEII版からのウィズフリークで、そのAPPLEII版の画面写真なども載っており、ドラクエの元となったゲームということで、私もそれなりに興味を持ったものです。

また氏のウィズについての話の中で、シナリオ2のダイヤモンドの騎士のパーティの中の魔法使いのレベルを、2752まで上げたという話があったのですが、当時は凄いと思ったものの、シナリオ2であればあるアイテムを使えば一気にレベルが上げられる技がありますので、今思えばそれほど大したことではないでしょうか。


そしてその'87年の秋頃、まずウィズと同じくRPGの元祖と呼ばれる「ウルティマ」がファミコンで発売され、12月にはいよいよウィザードリィもファミコンで発売されることとなり、ファミマガでもかなりページを割いて紹介されていきました。

私もこのウィザードリィにはかなりの関心を持ち、熱心に記事を読んでいたのですが、やはり当時の私にはとても敷居が高いゲームのように感じたため、購入することはなかったのです。

その後、IIが発売された時はほとんどゲーム雑誌は読んでいませんでしたので、ウィズに関心が生まれることはなかったのですが、翌年にウィザードリィIIIが発売された時は、毎号ファミマガとファミ通を読んでいましたので、再びウィズに興味を持ちはじめました。


それでもまだ敷居が高いように感じられましたので、欲しいとは思いつつも購入はしなかったのですが、秋頃になって遂にウィズIIIを購入したのです。

何でIやIIではなく、IIIから始めたということなのですが、これは単にIは売ってなく、IIはフロアが善と悪に分かれていたりして難しそうだったから、という理由からです。

そしてIIIにハマった私は、これはIも購入しなければと思い、たまたま入った近くのダイクマで新品を購入したのです。

さすがにIIIと比べると画面の処理や、操作性が悪く感じられたのですが、それでもシリーズ最高傑作とうたわれるIですから、それはそれはウィザードリィの世界にハマっていったものです。

因みにこの時のパーティは、最初は戦士3人、僧侶、魔法使い、盗賊という基本的なパーティで始め、後に戦士2人を侍とロードにしてプレイしていきました。

最初はそれで満足していたのですが、ゲームを長くプレイしていくうちに、中立だと職業にかなりの制限が付いてしまうことや、盗賊を後衛にすると宝箱の解除以外何の役にも立たないことなどに気付いていきましたので、パーティ編成にはちょっと失敗したかな、と思ったものです。

何でIIIの時に気付かなかったかと言いますと、IIIでは転職アイテムの存在により、職業に左右されることなく、ターボファイルさえあれば自由に転職出来てしまうので性格などほとんど気にすることがなかったからです。



それでIのパーティ編成は失敗したな、と思ったのですが、その時の経験がPS版のリルガミン・サーガで活かされましたので、それはそれで良かったなと思います。

そしてそのパーティで冒険をしていき、ワードナを倒して魔よけを取り戻してエンディングを迎えたのですが、このウィザードリィが本当に楽しくなるのはそれからでした。

それはこのウィザードリィでは、玄室に入ると現れるモンスターを倒すと必ず宝箱を出すのですが、そこから入手出来る村正、聖なる鎧、手裏剣の3つのアイテムを手に入れることこそが、このウィズにおける最高の目標だからなのです。



ただ、これら3つのアイテムは3種の神器と呼ばれるだけあり、出現確率が非常に低く、聖なる鎧と手裏剣は割と早く入手出来たものの、村正が本当に見つからず、ゲームを購入してから1ヶ月ほど経ち、レイバーロードらのグループを倒してやっと入手することが出来ました。

そして村正を入手してからもウィズをプレイし続け、6人共レベルを100以上まで上げ、それに飽きたら別の新たなパーティを作ってまでプレイしていったほどですから、どれだけ私がウィズにハマっていったからがわかっていただけるかと思います。







ウィザードリィ ファミ通クロスレビューへ行く。


キャ 音楽 操作 熱中 買得 独創 総合
3.69 3.48 3.39 3.74 3.50 3.60 21.40


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