ドラゴンクエストV
天空の花嫁


エニックス 1992年9月27日発売

9600円 12Mbit

フィールド型RPG

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初のSFC版
「ドラゴンクエスト」第5作目。

発表は90年の年末頃であったが、開発はすでにドラクエIV発売前の89年10月から行われており、実に3年の月日を要して発売に至った。

無論当時はSFCは発売前であり、ファミコンでの発売も検討されたそうだが8Mにすると14000円ほどになってしまったそうであり、これからユーザーの移行も行われるだろう、と言う趣もあってSFCへと決定した。

もちろん初のSFCのドラクエだけあって発売前の期待感は異常なほどの盛り上がりをみせ、都内の量販店などでは発売3日前から並ぶ暇人もいたりするなど、発売日はお祭り騒ぎの様相を見せた。



しかしゲーム性に大きな進歩は見られず、グラフィックもライバルのFFの後塵を拝していたため、間違いなく面白いゲームではあるのだがユーザーの評価はいまひとつであった。


ジレンマ
ドラクエはウルティマとウィザードリィを元として作られた事は誰もが周知の事であるが、どちらかと言えば作者がウィズの大ファンだった事もあってかウィズ色が強いと言えるだろう。

対面式の戦闘はその際たるものであり、IVまでは一切のエフェクトを付けず、状況をほとんど文章で表している部分などは、その場面をプレイヤーの想像力に委ねようとしているのは明らかだ。

しかしSFCになり一気にハードの性能が上がると、当然ユーザーとしてはその性能を存分に活かしきったゲームを必然的に求める事となる。これはゲーム性を重視してきたドラクエにとっては頭の痛い問題であり、派手なエフェクトを追加すれば「ドラクエらしさがない」、伝統を守れば「物足りない」と言われ、どっちに転んでも良い結果は生まれないのだ。


ライバル作品のファイナルファンタジーは1作目からグラフィック重視なのだから、グラフィックの性能が上がる事に関しては何の問題もない。

実際にSFC1作目のIVからその機能を存分に活かしまくり、ファミコン時代はまだマニアックと言う印象が強かった同シリーズを一気に大ヒット作品へとブレイクさせるに至った。

結局ドラクエはファミコン時代のコンセプトから抜け出す事が出来ず、すでにハード発売から2年近くが経った頃としてはあまりにも貧弱なグラフィックに終始してしまった。

もちろん大ヒットは記録したのだが、ユーザーの中ではドラクエよりもFFの新作への期待感の方が大きくなっていったのは事実だった。



背景
リアル世代の方なら良くご存知だとは思うが、初めてVの画面写真が発表されたのは背景付きの戦闘シーンだ。

たった1枚とは言っても初のSFCのドラクエの画面、そしてI以来の背景の復活と大きなインパクトを与えたものだが、あまりにも情報が少ないため雑誌としては延々その点を強調するしかなく、次第にうんざりしてきた人も多かった事だろう。

またPCEユーザーにとっては「邪聖剣ネクロマンサー」において、すでに背景付きのパーティ戦闘はとっくに実現されていたし、それだけでなく敵キャラのアニメーションまで表現されていたのだから、ちょっと騒ぎすぎではないか、と思ったものだ。



まあIIIのバッテリーバックアップの件同様、それだけドラクエの存在が大きいものだ、と言う証明でもあるのだが、ドラクエが初めて行ったかのような過剰表現はやめて欲しいものだった。


モンスターを仲間に
背景付きの戦闘に続くVの売りとしては、やはりモンスターが仲間になる事だろう。しかし女神転生をプレイした人であればこちらも今更感満載であり、それがどうした、的な感覚であった。

しかし女神転生と決定的に異なる点として、ご存知のようにモンスターも仲間と全く同じ扱い、つまりレベル上げはもちろん武器やアイテムも持たせる事が可能なため、これはVならではの売りであった。

がしかし、肝心の仲間にする手順が単なる運任せと言うのは何とも物足りず、悪魔との駆け引きも楽しみの一つであった女神転生と比較するとやはり面白くも何ともないものであった。





オーケストラ
ドラクエのサントラを聴き続けてきた人であれば、誰もが1度はオーケストラバージョンをバックにゲームをプレイしてみたい、と思ったことだろう。そんなファンの声が届いたか、このVにおいてはオーケストラをイメージとした音色で統一されている。

しかし壮大なオーケストラをSFCの音源で再現すると言うのは所詮無理な話であり、いかに近付けたつもりであっても所詮は電子音源が奏でる音、人間が奏でる音と比較して何の面白みもない、冷たい音色が流れるだけであった。

これは後にFFVIのサントラにおいて植松氏も語っていた事だが、やはりROMカセットではオーケストラの再現は無理なのか、と思い知らされたものだ。


ゲーム1ヶ月後は恒例のNHK交響楽団によるサントラも発売された。オーケストラ版は文句なく素晴らしいものであったが、2枚目のオリジナル盤がいまひとつだった。

ファミコン時代ではステレオ+高音質のファミコン音源が聴ける、と言うのはとても楽しい物があったが、元々ステレオのSFCではそのありがたみはなくなり、またファミコン時代ほど音質も向上されていない印象も受けたので、全く面白みのない出来だった。








個人的な思い出
当然このVは発売日に購入する予定でしたが、近所のお店が今回は先着順ではなく予約制を取ってしまい、それを知らなかった私は見事に予約のタイミングを逃してしまいましたので、発売日に購入する事はかないませんでした。

単に入手できなかっただけなら良いのですが、それプラス色々な事がありましたので、これまで以上に家庭用ユーザーを敵視し、アーケードゲーマーとしての自覚を一段と持つようにまでなってしまいました。

直前に発売された「ゲーメストアイランド黙示録」において、家庭用ユーザーとの確執が多く見られた事を知りましたが、当時の私がまさにそんな状況であり、先輩のゲーマーの方々の気持ちは非常に良く理解出来たものです。


結局自分で購入する事はせず、翌年4月に友人から借りてようやくVをプレイする事が出来たのですが、シリーズ初プレイがレンタルと言うのはI以来の事でした。

プレイ内容ほとんど攻略本を見ながらプレイしましたので、当然何も詰まる事なくあっさり終わりました。どういう意図があったのかは忘れましたが、アーケードゲームのクリアに比べたらドラクエの自力クリアなど何の自慢にもならない、とでも思ったのでしょう。

翌年1月4日、新日本プロレスの東京ドーム大会へ足を運んだ私は、直前に新宿のヨドバシカメラへと向かい、5000円でようやくドラクエVを購入しました。今とは異なりドームは満員の客で埋まっていましたが、ドラクエVを持っていた人はおそらく私ひとりだけだった事でしょう。



RETRO CONSUMERS


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