オールスター プロレスリング |
|
PS2 スクウェア 2000年6月8日発売 6800円 CD-ROM 操作方法は2種類から選択可能 |
リアルさ |
PS2初のプロレスゲームとして発売されたのが、この「オールスター・プロレスリング」だ。 さすがにPS2だけあって見る人を釘付けにさせてしまうほどのグラフィックを誇っており、私たちが会場やテレビで見る「プロレスラー」の姿を、本当にそのまま再現している。 また当時はSRSなどでもこのゲームのCMが放映されていたのだが、美空ひばりさんの「川の流れのように」に乗って力道山から武藤、蝶野、橋本までの歴代トップレスラーたちが登場する作りはなかなかの出来で、プロレスファンの心を捉えるのに十分な役割を果たしていたものだ。 ただあまりにリアルさに拘りすぎたためか、純粋なゲームとして見た場合は厳しい面が多く見られ、それまでのプロレスゲームに慣れたプレイヤーからは不満の声が多かった。 しかし、ある意味では最も「プロレス」を再現したゲームである、とも言えるため、その辺りの挑戦意欲はしっかりと評価しなければならないだろう。 |
演出 |
このゲームの特長と言えば、やはりPS2ならではのグラフィックの凄さだ。 本物そのままのレスラーのグラフィックに加え、顔の表情も細かく動き、技のモーションも現実そのままなど、それまでのプロレスゲームを遥かに超越している。 もちろん入場シーンも凝りに凝っており、ドームなどではちゃんと電光掲示板に対戦カードが表示され、オーロラビジョンにはゲーム画面がそのまま映し出され、レスラーによっては花火による演出が加わるなど、見事なまでに新日本のドーム大会を再現している。 レスラーの入場曲は一部ゲームオリジナルなものの、ほとんどが会場使用音源を使用しており、それらの曲は実際に会場で流れているようなエコーがかかっているなど、まさにプロレス会場さながらのリアルさだ。 ただ試合中はBGMも実況もなく、歓声だけというのは物足りない。 |
プロレスの本質 |
以上のように演出面ではかなりのレベルに達しているのだが、実際にプレイしてみるとややリアルさに拘りすぎたためか、ゲームとしてはとっつきの悪さが目に付く。 このゲームの操作方法は特殊で、一応ボタン操作も選ぶことが出来るようになってはいるものの、基本的にはアナログレバーのみで操作し、左スティックで移動、右スティックで技をかける。 具体的な技のかけかたは、右スティックを相手方向に倒したり、相手方向に向けて一回転させれば技がかけられるのだが、当然それでは必然的にかけられる技が限られてしまう。 そのため画面上部にテンションゲージというものがあり、このゲージの状態によってかけられる技が変化するのだが、もちろんゲージはプレイヤーの自由にはならないため、プレイヤーがかけたい技がかけたい時にかけられないのである。 レスラー自体の動きも現実通りに再現しているため、他のプロレスゲームよりももっさりしており、試合時間も長くなりがちなので、結果的にストレスの溜まる展開が続いてしまう。 よってそれまでのプロレスゲームと同じように、ただ相手に勝つだけのプレイをしていると、すぐに嫌気が差してしまうだろう。しかし、プロレスの本質を理解していれば、このゲームがいかにプロレスを忠実に再現しようとしているかがわかる。 プロレスというのは相手に勝つことが目標なのではなく、リング上にいるレスラー、レフェリーが皆協力して試合を作り、観客を感動させるのが目的のエンターテインメントだ。そのため、一部例外もあるものの、基本的に格闘技のようなどちらか一方による秒殺というのはなく、攻撃と受けを繰り返していくのがプロレスの試合だ。 その流れは、団体にこそ差はあるものの、新日本の場合はまずグランドレスリングから始まり、段々技を派手にしていき、最後に大技で締めくくるという流れとなる。 そして、そのプロレス独特の流れを初めて忠実に再現しようとしたゲームこそが、このオールスター・プロレスリングなのである。 確かにこのゲームは思い通りの技をかけられない、というジレンマこそあるものの、試合の流れによって技が変わるということは、実際のプロレスでレスラーが大技をかけるための伏線となる技を再現出来るのだ。 具体的に言うと、蝶野はSTFの伏線として逆片エビ固めをよく使うのだが、どちらも相手の足から極めていく技のため、それまでのプロレスゲームでは得意技のSTFを優先する以上、伏線となる逆片エビ固めはかけられないのである。 当然その蝶野の一連の流れをゲームで再現出来ない以上、ゲームとして面白くても本来のプロレス、蝶野の魅力を忠実に再現しているとは言い難いのだ。 その今まで再現出来なかったプロレス独特の流れを初めて忠実に再現しようとしたのが、このオールスター・プロレスリングという訳なのである。よってこのゲームを楽しむためには、まずプロレスというエンターテインメントの本質をちゃんと理解していくことが必要という訳だ。 |
CONSUMER REVIEWS |